北海道利尻郡利尻富士町・利尻礼文サロベツ国立公園
利尻山1719m・北峰
Jun 13. 2006

利尻山風景


利尻山は、稚内沖に浮かぶ最北の鋭鋒で実に美しい。登山愛好家なら、誰もが元気な内に島のてっぺんに登り、のんびりと島を眺めてみたい山であり、島である。

昨年の10月利尻富士町観光協会にemailで、登山情報の提供を依頼しました。直ちに大きな封書が届き、有益な情報が満載です。

そして、念願かなって”山歩き・やまびこ会”有志9名で挑戦することにしました。 メンバーは、女性5名・平均年齢58歳、男性4名・平均年齢67歳です。 果たして全員無事に登れるか、今年の残雪も天候も気になります。 そこで、宿舎を登山基地に相応しい『お宿・マルゼン』さんにお願いし、 現地との情報交換を緊密にして、余裕のある登山計画とし、健脚者も、そうでない者も含めて全員 で島のてっぺんに挑戦することにしました。

決行日の天気予報は、曇り時々晴れで、雨の心配はなさそうです。お宿マルゼンの配慮で、出発時間を更に1時間早めて、鴛泊登山口(利尻北麓野営場)を4:20に出発しゆっくりペースで山頂を目指しました。 その一行の足取りを報告します。

写真説明、利尻富士町の南浜湿原(メヌウショロ沼)からの利尻富士・左端の小山は、仙法志ポン山320m・登山の翌日10時頃撮影。



マップ&コースタイム
(クリックすると見易くなります)

・お宿 マルゼン4:00発

《登り》
@鴛泊登山口 4:10着・WC・4:20発/海抜220m
A 甘露水 4:30着(水補給)/280m
B5合目 5:40着・朝食・6:05発/615m・13℃
C6合目・第1見晴台 6:30着
D7合目7:00着
E8合目・長官山 8:12着・8:30発/1218m
F利尻岳避難小屋 8:50着/1230m
G9合目 9:30着
H沓形分岐 10:11着/1580m
I利尻山頂・北峰 11:00着・昼食・記念写真・オカリナ独奏

《下り》
I利尻山頂・北峰 12:04発
J利尻岳避難小屋 13:30着/1230m
K8合目・長官山 13:45着・14:02発/1218m
L6合目・第1見晴台 15:15着
M甘露水 17:13着/280m
N鴛泊登山口 17:24着・

 ・登山総所要時間:13時間04分/往復12.4Km
  内訳:登り:6時間40分、下り:5時間20分
 ・休憩・食事&お遊び時間合計:約2時間
 ・総歩行時間:約11時間



←鴛泊登山口
4:00ジャストに、お宿マルゼンのナイスガイ(息子さん)運転のワンボックスカーで出発し、 利尻北麓野営場(鴛泊登山口)で身支度(WC)を済ませ、長時間の登坂に備えて、 500mlのボトル3本を携え、4:20足取りも軽く出撃しました。

甘露泉水→ 緩やかな石畳を10分ほど進むと、島自慢の名水です。全員が手受一杯飲み干し、 空のボトルに給水します。


5合目・朝食
5:40到着、早速マルゼンの昼食用弁当のおにぎりとバナナで、 礼文島の島影を見ながら朝食です。おにぎりは結構な大きさです。
私は、おにぎり1個とバナナ1本、前夜コンビニで買ったアンパン1個で十分でした。 残りの1個とおかずは昼食用に廻します。




←6合目・第1見晴台
登路にかぶさるダテカンバをくぐり、時々頭をぶつけながらも、鶯の鳴き声に励まされて到着です。

携帯トイレ用ブース→
利尻山クリーン活動の一環です。利尻山には、このようなブースが4ヶ所にあります。 今年から、入山者に対して、現地の宿泊先で携帯用トイレの購入を勧められます。1個400円で、昨年までは町が負担していたそうです。 主に大きい方の緊急用に使用されるようでした。我々一行は未使用で無事に下山できました。 その、 ブースの中は?その 使用方法も見てね!



←8合目・長官山
当初の到着予定時間限度10:20、に対して、8:12の到着です。一行に笑顔があふれました。 約2時間先行しての到着で、全員の登頂が可能と判断できたからです。

《長官山の謂れ》昭和8年に北海道開発庁長官が利尻島を訪問した。その記念に島民がこの尾根に記念の石碑を建てた。かなり大きな記念碑で、当時の島民の喜びようが伺える。当時どのようにして運んだか?この場所で刻んだか?

8合目から山頂(北峰)展望→
ここから、残雪帯と避難小屋をへて、最後の難関急登コースにとり付きます。 目前の尾根が、青い空が我々を待っています。



←8合目・到着記念
汗ばむTシャツに残雪の冷気がさわやかです。
十分な休息の後、ここまで全員登った記念の写真を撮りました。

山頂を目指す→
ここから先は、決して無理をするなとガイドブックは忠告しています。 残雪帯、避難小屋をへて、沓形コース分岐へ、



←避難小屋手前
中央の小屋が避難小屋です。冬季は、そこに留まり天候を伺い、山頂を目指すと思われます?

残雪帯→
利尻は天候が急変するという。ガスが吹き上げてきましたが、心配もせずに進みました。



お花畑
残雪帯を抜けると、最後のお花畑です。 左が、エゾハクサンイチゲ、右の青い花はエゾエンゴサク?、どなたか教えてね。



←沓形ルート分岐
9合目からは、崩壊が進む尾根を這い上がります。ここから先は、一層の崩壊が確認できました。
前方に、我々をモースピードで追い越した頑健と思われる青年登山者が座り込んで動けません。 彼は、我々より2時間遅く入山し、山頂目前でダウンしました。聞いてみると最後の残雪急登が不可能なほどへばっていました。腰が立ちません。一行が踏み跡をより確かにつくり、励ましたのに、登る気力も体力もなくじりじりと撤退しました。

北峰直下→
赤茶けた砂地帯は、登山者の踏み跡がもとで植物による地表保護機能もなく、 年々、果てしなく崩壊が進むと思われました。 やがて、山頂一帯は、ローソク岩の集落に変貌し、 昔は、シニアーでも登れた山と語り継がれると思われます。



←登頂記念
当初予定の1時間前の11:00に全員無事に登頂した”山歩き やまびこ会”の皆さんです。 ヤッホー!
山頂は快晴・無風のポカポカ陽気でしたが、中腹にガスが停滞し、山頂から島の姿は展望できませんでした。

山頂風景→
北峰直下はご覧のようなローソ岩の絶壁です。私は、更に崩壊が進むと最終的には山頂域は全部この様になると思いました。その時は、クライマーがハーケンを打って登る山となりそうです。




←オカリナ奏者
最果ての利尻の空に、 『コンドルは飛んで行く』の曲が流れます。
そして、大きなおにぎりをほほ張り、 素敵な1時間を楽しみました。Mさん、オカリナ演奏ありがとう。

下山→
下山の前に、携帯電話で最愛の人に、『全員無事に登頂、これより下山』を知らせます。 靴紐を締め上げて、12:04名残欲しい山頂をあとにしました。



←9合目への尾根
ロープの助けを借りて、直下の崩壊ルートをずり下ります。その先が、長官山へと続く尾根です。

進む崩壊→
この様な大きな掘割となっています。赤砂の急斜面です、この辺りが親不知子知不か、でも、ロープがありますので、心配はありません。



←エゾハクサンイチゲ
無事に全員登頂し、余裕がでてきました。 避難小屋上のお花畑に目が留まります。

ザゼンソウ→
チシマザサの中の陽射しの届くところには、 大きなザゼンソウが雪解けを待って、にょきにょきと顔を出していました。



←やれやれ
下りといえども3時間の長丁場です。第1見晴台真近で、海岸線とペシ岬を確認しました。

鴛泊港&ペシ岬→
ペシ岬は、鴛泊港の観光名所です。明日の利尻の展望が楽しみです。 しかしこの先も、どんどんと飽きる程の下りが続きました。



←登山道
中腹域の登山道の大半は、この様なダテカンバの低木が頭上に迫ります。 特に、長身者には難儀な障害物でした。私は、再三頭をぶつけ、メガネもはね飛び、大変なヒヤリ を体験しました。幸い、着地が石の上でなくレンズは割れずに済みました。

下山記念→
鴛泊登山口の利尻北麓野営場に17:24全員無事に下山しました。管理棟の係りに報告し、 隣の公衆電話で、お宿マルゼンへ連絡します。携帯は通じません。 トイレを済ませ整理体操が終わると、出迎えのワンボックスカーがやってきました。 メンバー全員疲れ果てていたと思われましたが、無事に全員が登頂できた喜びが勝りました。その証拠の下山記念の写真です。皆、満面の笑顔でした。
写真の撮影者は、お出迎えのマルゼンの息子さんです。

皆さんお疲れさんでした。出迎えの車で、『利尻富士温泉』へ直行し、疲れをほぐし、 マルゼン食堂で、夕暮れの利尻山を眺め、K隊長の音頭で登頂記念の祝杯上げ、利尻のご馳走をお腹一杯に収めました。
素晴らしい登山を体験させて頂きました。お世話になった、セントレア・稚内ANA直行便、フェリー、 お宿マルゼンの皆さんありがとう。



利尻島 お宿マルゼン
お世話になった『お宿マルゼン』です。お宿と、レンタカーと、食堂のチームワークも抜群です。

各事業部は、家族が分担協力し、アットホームな素晴らしい登山基地を提供して頂きました。 お宿の下は、ウニの採れる浜辺です。浜辺を散歩しながら、ウニ漁を眺めたり、採りたてのウニをおすそ分けしてもらったり、ペシ岬散策に出かることも出来、楽しい一時を過ごしました。 お宿マルゼンは、登山に観光にそしてアウトドアー派にお勧めの宿と思いました。

利尻島訪問の機会に 利尻富士町 利尻町のホームページ へどうぞ。



利尻登山を終えて
@ 9名全員登頂
この度の利尻登山で最大の喜びは、全員が無事に登頂できたことです。
その要因は、早朝の出発で、十分な時間配分がとれたことです。各到達点では、 当初の予定時間を常に1から2時間早く到着しました。時間の余裕は隊員の安心感となり、元気がでます。そのことが全員の登頂を可能にしたと思われます。 更に、天候に恵まれたことがラッキーであったと思います。

A 登山道に思う
登山道について、我々の体験から思うことを報告します。

9合目から上の崩壊・崩落 の進行が心配でした。これは、近年の利尻登山ブームが加速させていないか、我々も加害者です。自然環境のバランスが少しでも崩れれば、この様な崩落現象となり、 山の姿が変わります。利尻に木道は似合いませんが、ものは考えようです。屋久島も、開聞岳も要所要所には、木道が整備されています。ニュージーランドのミルフォード・トラックなどもトレッカーの安全面から、自然保護の観点からも木道が整備されていました。
山頂域の崩壊は、今となっては、遅すぎるように思われますが、治山治水技術を駆使して、 元通りにならないものか、登山道の横は、植生が見られます。高山植物も見られました。 したがって、登山者が地表を踏まないようにすれば、屋久島のように自然が保護されるかも知れないと思われました。

中腹域の登山道の整備についての意見です。
利尻登山は多くのシニアーも挑戦します。所要時間も長く、困難です。それに追い討ちをかけるのが登山道に覆いかぶさるダケカンバの倒れた枝です。この枝は何とかならないものかと思いながら下山し、利尻富士温泉の湯に浸かっていました。

たまたま、湯船の中で、利尻富士町長のYさんと 隣町のNさんにお会いしました。つい、登山道の話になりました。町長は、利尻登山者は毎年10000人訪れるという。しからば安全確保のために、ダケカンバの倒れた枝は何とかなりませんかとお願いしました。以前にきったことがあるが、環境庁に叱られたと言う。 更に、屋久島へは行ったことがありますかと尋ねたら、体験しているといわれました。 あれこれ話が弾み、我々登山者の気持ちは十分に伝わったように思われました。 最後に、今日は良い話を聞きました。持ち帰って、皆に話すと申されました。

この湯船会談の成果は、来年の登山者が効果を確認してくださるようにお願いして、利尻登山の感想とさせて頂きます。我々は、島の宝である利尻山の安泰と島の平和と幸せを願っています。



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